Ashton Asokeの建築許可取り消し判決

 中央行政裁判所は7月30日、接道義務違反により高層コンドミニアム「Ashton Asoke(アシュトン・アソーク)」の建築許可の取り消しを命じました。

 「Ashton Asoke」はスクンビット21通り(アソーク通り)に立地する、敷地面積4,590.4平方メートル、総床面積55,348平方メートル、地上50階、地下1階、783部屋の高層コンドミニアムですが、元々は7階建て、23部屋の低層コンドミニアムを建設する計画であったのが何度かの変更により現在の形となっています。

 今回の裁判は、地球温暖化防止協会および近隣住民15名がワタナー区、土木局、バンコク都、タイ公共輸送公社(MRTA)、環境影響評価審査委員会の5者を相手に建築許可の取り消し等について訴えていたもので、裁判所の職権に基づきデベロッパーであるアナンダーMFアジア・アソーク社およびアナンダー・デベロップメント・トゥー社も訴訟関係人として裁判に参加していたものです。

 同裁判により違法とされたのは2522年建築物管理法に基づく2535年省令第33版(2543年改訂第55版)第2条第2項に定める接道義務に関してです。法令上は公道に12メートル以上接道する必要がありますが、要件を満たしていないというのが取り消し理由です。

2522年建築物管理法に基づく2535年省令(第33版)

第2条
 総床面積が30,000平方メートル以下の高層建築物または特別大規模建築物に使用する土地は、幅員が10メートル以上の公道に12メートル以上接道し、幅員が10メートル以上の他の公道に交差するまで同幅員を保たなければならない。

 総床面積が30,000平方メートルを超える高層建築物または特別大規模建築物に使用する土地は、幅員が18メートル以上の公道に12メートル以上接道し、幅員が18メートル以上の他の公道に交差するまで同幅員を保たなければならない。

 第1項および第2項に定める公道に接道する土地は、12メートル以上の幅員を建築物のある付近まで保ち、かつ消防車の出入りができるよう空間を確保しなければならない。

 同コンドミニアム建設地となった土地は元々、アソーク通りに6.4メートル接道していましたが(現在の出入り口よりスクンビット通り側)、地下鉄建設に伴ってアソーク通りに面する土地が収用されたことによりアソーク通りへの出入り口を失う結果となったため、元の地主が同地の所有権を有することになったMRTAを訴えて6.4メートル幅の土地を囲繞地通行権として確保したという経緯があります。

 その後、同用地を購入したアナンダー社は高層コンドミニアム建設の要件となる接道義務を満たすため、MRTAとの交渉により囲繞地通行権を有する土地(幅6.4メートル分)とサイアム協会側のMRTA所有地を交換し、さらにMRTAから幅6.6メートル分を賃借して合計13メートル幅の用地を確保することで建設にこぎつけました。

 しかし、今回の判決では、MRTA所有地のアナンダー社への賃貸は土地収用の目的外使用にあたるとともに、MRTA所有地をコンドミニアム建設地の一部とみなすことはできないとし、土木局がアナンダー社に与えた建築設許可は違法であると結論付けました。このため、土木局がアナンダー社に発行したすべての許可証は発行日に遡って取り消す判決を下しました。

 なお、中央行政裁判所は行政裁判における第一審になりますが、行政裁判は二審制のため控訴があった場合は上級裁判所である最高行政裁判所で審理されることになります。