人事・労務

【労働者保護法について】

労働者保護法の概要は以下の通りです。

[雇用について]

 雇用契約

  • 雇用契約は書面での締結が法律で義務付けられていないが(口頭でもOK)、トラブルを避けるためにも書面で締結すべきである。労使双方の言い分に違いが生じ、裁判で争うケースも多い。

 就業規則

  • 労働者を10人以上雇用する場合、タイ語の就業規則を作成する義務がある(第108条)。
  • 就業規則の記載事項は以下の通り。
    (1)労働日、通常の勤務時間、休憩時間
    (2)休日および休日に関するルール
    (3)時間外労働、休日労働に関するルール
    (4)賃金、時間外労働手当、休日労働手当、休日時間外労働手当の支払日および支払い場所
    (5)休暇および休暇に関するルール
    (6)規律と罰則
    (7)苦情の申し立て
    (8)解雇、解雇補償金、特別解雇補償金
  • 雇用主は労働者が10人に達した日から15日以内に就業規則を施行しなければならない。労働省への届け出は廃止となった(2017年改正法第6版)。
  • 就業規則は事業所において公開・掲示し、労働者が閲覧できるようにしなければならない。また、電磁的方法による開示も可能となった(2017年改正法第6版)。

 従業員名簿

  • 労働者が10人に達した場合、従業員名簿を作成し、事業所に保管しなければならない(第112条)。
  • 従業員名簿の記載事項は以下の通り。
    (1)氏名
    (2)性別
    (3)国籍
    (4)生年月日および年齢
    (5)現住所
    (6)雇用開始年月日
    (7)役職または職務
    (8)賃金等
    (9)雇用終了日
  • 労働者の退職日から2年間の保管義務がある。

 賃金台帳

  • 労働者が10人に達した場合、賃金台帳を作成しなければならない(第114条)。
  • 賃金台帳の記載事項は以下の通り。
    (1)労働日および労働時間
    (2)出来高払いの労働者の出来高
    (3)各労働者の賃金、時間外労働手当、休日労働手当、休日時間外労働手当の率および額
    賃金支払い日から2年間の保管義務がある。

[労働条件について]

 勤務

  • 勤務時間は1日8時間、1週間48時間以内とする(第23条)。
  • 連続して5時間以上労働する場合、1時間以上の休憩時間を与えなければならない(第27条)。
  • 休日は1週間に1日以上与えなければならない。また、休日と休日の間隔は6日以内とする(第28条)。

 休日・休暇

  • 祝日はメーデーを含めて年間13日以上(第29条)。
  • 有給休暇は勤続満1年で6日以上を支給。翌年以降も同様(第30条第1、2項)。
  • 未消化の有給休暇は次年度に持ち越しが可能(第30条第3項)。
  • 傷病休暇は年間30日まで有給(第57条第1項)。3労働日以上傷病休暇を取得する場合、医師の診断書の提出を求めることができる(第32条)。
  • 2019年改正法第7版により出産休暇は休日を含む98日までとなった(改正前は90日)。ただし、有給は45日まで。出産休暇には出産前の妊婦健診を含む。使用者は妊娠を理由に解雇できない(第41条、第43条、第59条)。
  • 避妊手術休暇は医師が診断書で必要と認めた期間を有給とする(第33条、第57条第2項)。
  • 兵役休暇は年間60日まで有給(第35条、第58条)。
  • 2019年改正法第7版により必要不可避な用事休暇は年3日まで有給となった(第34条、第57/1条)。
  • その他、研修休暇(第36条)がある。

 時間外労働手当等

  • 時間外労働に対しては通常の1.5倍以上の手当を支払う(第61条)。
  • 休日労働に対しては通常の2倍の給与以上を支払う(第62条)。
  • 休日時間外労働に対しては通常の3倍以上の給与を支払う(第63条)。
  • 時間外労働、休日労働、休日時間外労働の各手当の算出方法は、月額給与を30で割り、さらに1日の平均労働時間で割った金額を1時間あたりの賃金として計算する(第68条)。
  • 雇用者または雇用、報償付与、解雇の権限を有する管理監督者の場合、時間外労働、休日労働、休日時間外労働の各手当の支給は義務付けられていない(第65条、第66条)。

 [雇用契約終了について]

雇用契約解除

  • 期間の定めのない雇用契約の場合、雇用主または労働者は最終賃金支払い日の3カ月前から一賃金支払い日前までの間に書面にて雇用契約の解除を告知しなければならない。この場合、試用期間も期間の定めのない雇用契約とみなす(第17条第2項)。
  • 事前告知により雇用契約を解除する場合、雇用主は契約終了日までの賃金を支払うことにより直ちに解雇することができる(第17条第3項)。
  • 事前告知なく雇用契約を解除する場合、雇用主は労働者に対して勤務最終日から雇用契約の解除が有効となる日までの期間の賃金を勤務最終日に支払う(2019年改正法第7版第17/1条)。

 解雇補償金

  • 雇用主が労働者を解雇する場合、または雇用主が事業継続できず、労働者が賃金を得られなくなった場合、勤続年数に応じて以下の解雇補償金を支払わなければならない(第118条第1項、第2項)。
  • 2017年改正法第6版により、雇用契約または就業規則等に基づく定年退職の場合も解雇とみなし、解雇補償金の支払義務がある旨が明文化された(第118/1条)。
  • 2019年改正法第7版により、解雇補償金は勤続年数が10年以上20年未満で最終賃金の300日分以上、20年以上で最終賃金の400日分以上となった。
勤続年数補償金
 120日未満 なし
120日以上1年未満最終賃金の30日分以上
1年以上3年未満最終賃金の90日分以上
3年以上6年未満最終賃金の180日分以上
6年以上10年未満最終賃金の240日分以上
 10年以上20年未満最終賃金の300日分以上
20年以上最終賃金の400日分以上

解雇補償金の支払い対象外となるケース

  • 以下の非違行為があった場合、雇用主は労働者に対して解雇補償金を支払う必要はない(第119条)。

    (1)不正または雇用主に対して故意に刑事上の犯罪を犯した場合
    (2)故意に雇用主に損害を与えた場合
    (3)過失により雇用主に重大な損害を与えた場合
    (4)就業規則または雇用主の合法かつ公正な命令に違反し、雇用主が書面で警告を行った場合(重大な場合は警告書が不要。警告書の有効期限は1年間)
    (5)正当な理由なく連続3日間(間に休日を挟む場合も含む)職務放棄した場合
    (6)最終判決で懲役刑を科された場合(過失による犯罪、軽犯罪の場合は使用者に損害を与えた場合)

  試用期間

  • 期間に関する規定はないが、勤続日数が120日を超える場合は解雇補償金の支払い義務が発生するため、実務上は119日以内で定めるケースが多い。

 定年退職

  • 定年退職の年齢を定める規定はないが、55歳から60歳の間で定めるケースが多い。
  • 雇用契約または就業規則等で定年退職年齢に関する定めがない場合、または定年退職年齢が60歳を超えた年齢に定められている場合、満60歳に達した労働者は30日前までに定年退職の意思を表明することで退職するができるとともに、雇用主は解雇補償金を支払う必要がある(第118/1条第2項)。
  • 第118/1条の新設に伴って、雇用契約または就業規則等で定年退職年齢の定めがある場合はそれが適用されるが、定めがない場合は60歳が定年退職の目安となるであろう。

特別解雇補償金

(1)事業所移転(2019年改正法第7版)

  • 事業所を新たな場所または別の事業所に移転する場合、事業所移転日の30日以上前に労働者に対して告知しなければならないが(第120条第1項)、雇用主がが事前に告知しなかった場合、新たな事業所での勤務を希望しない労働者に対して事前告知に代わる特別解雇補償金として最終賃金の30日分の賃金を支払う(第120条第2項)。
  • 事業所移転により労働者またはその家族の生活に支障が出る場合、労働者は告知日または事業所移転日(事前告知を行わなかった場合)から30日以内に書面で雇用主に通知しなければならない。この場合、事業所移転日に雇用契約が終了したものとみなし、雇用主は第118条の定める解雇補償金以上の金額を特別解雇補償金として支払う(第120条第3項)。
  • 雇用主は事前告知に代わる特別解雇補償金または特別解雇補償金を雇用契約終了日から7日以内に支払う(第120条第4項)。

(2)整理解雇

  • 使用者が整理解雇をする必要が生じた場合、使用者は解雇日の60日前までに労働監督官および解雇対象者に対して解雇日、解雇理由、解雇者リストを告知しなければならない(第121条第1項)。
  • 使用者が事前告知をしない、または第1項に定める期間までに告知をしない場合、使用者は第118条に定める解雇補償金に加えて最終賃金の60日分を事前告知に代わる特別解雇補償金として支払わなければならない(第121条第2項)。
  • 第121条に基づいて解雇する労働者が勤続6年以上の場合、第118条の解雇補償金に加えて満1年につき15日分の特別解雇補償金を支払う。ただし、本条の解雇補償金の合計金額は最終賃金の360日分を超えない範囲とする(第122条第1項)。
  • 勤続年数が1年未満の場合、180日を超えていれば勤続1年として計算する(第122条第2項)。

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