企業法務

外国人の定義

 タイにはタイ国籍を持たない我々外国人に対してさまざまな規則、規制等があります。滞在・居住するにはビザ、就労するには労働許可証(ワークパーミット)がそれぞれ必要となりますし、外国人は原則、土地を所有することができません。当然、選挙権もありません。また、外国人がタイ国内で事業を行う場合はライセンスを取得する必要があります。

 ここで「外国人」の定義を確認する必要があります。タイには「外国人」を定義する法律がいくつかありますが、自然人(個人)であればタイ国籍のない者は当然に外国人となります。

 一方、法人の場合は法律によって多少異なります。外国人が100%出資する法人のみが「外国人」ではありません。例えば、土地法では外国人が49%超の株式を保有する法人は「外国人」とみなされますが(詳細は不動産法務を参照)、外国人事業法では外国人が50%以上の株式を保有する法人を「外国人」としています。つまり、法律によって外国人か否かに違いが生じます。1%弱と微々たる数字ですが、この差によって土地所有の可否が分かれますので、土地所有を希望する場合は大きな数字となります。

外国人事業法
第4条

 本法において「外国人」は以下の通りとする。
(1)タイ国籍を有しない自然人
(2)タイ国において登記されていない法人
(3)以下に該当する、タイ国において登記された法人
   (ア)(1)、(2)または(1)もしくは(2)が50%以上を出資する法人が登録資本金の50%以上を保有する法人
   (イ)業務執行社員もしくは業務執行代理人が(1)の者である合資会社または登記された合名会社
(4)(1)、(2)、(3)または(1)、(2)もしくは(3)が50%以上を出資する法人が登録資本金の50%以上を保有する、タイ国において登記された法人

 本定義の適用上、無記名株券を発行する株式会社の株式は外国人の株式とみなす。ただし、省令に別段の定めるのある場合を除く。

外国人の規制・禁止事業

 外国人事業法では上述の「外国人」に該当する者に対して参入を規制・禁止する事業を定めており、下記の事業を行うことができません。

 逆に言えば、「外国人」に該当しない場合はこれらの事業を営むことが可能となります。このため、タイ国籍者(法人を含む)が資本金の50%以上を出資するタイ企業を設立する必要がでてきます(投資奨励法、タイ国工業団地法等により設立された法人を除く)。

付表1
特段の事由により外国人に許可しない事業

(1)新聞事業、ラジオ事業、テレビ事業
(2)稲作、畑作、果樹
(3)飼育
(4)林業および木材加工
(5)タイの領海および経済水域における漁業
(6)タイ薬草の加工
(7)タイの古美術品または歴史的価値を有するもの売買および競売
(8)仏像および鉢の製造
(9)土地売買

付表2
国内の治安に関する事業、または芸術・文化・地場工芸、天然資源および環境に影響を与える事業

第1類 国内の安全または治安に関する事業
(1)製造、販売、修理
  (ア)銃器、弾丸、火薬類、爆発物
  (イ)銃器、弾丸、火器類の原材料
  (ウ)軍用銃火器、航空機、軍用車両
(2)国内における陸上輸送、水上輸送、航空輸送

第2類 芸術・文化・地場工芸に影響を与える事業
(1)タイの芸術、工芸に関する古物品または美術品の売買
(2)彫刻品の製造
(3)養蚕、タイシルクの製造、タイシルク布の紡織、タイシルク布の捺染
(4)タイ製楽器の製造
(5)金製品、銀製品、ニエロ細工品、真鍮製品、漆器の製造
(6)タイ伝統工芸の食器類または陶磁器の製造

第3類 天然資源または環境に影響を与える事業
(1)サトウキビを原料とする砂糖製造
(2)製塩
(3)岩塩製造
(4)鉱業(採石を含む)
(5)家具および道具類用の木材加工

付表3
タイ人が外国人との競合に対して十分でない事業
(1)精米業、米および穀物を原料とする製粉業
(2)水産養殖業
(3)植林による林業
(4)合板、ベニヤ板、チップボード、ハードボードの製造
(5)石灰の製造
(6)会計サービス
(7)法律サービス
(8)建築サービス
(9)エンジニアサービス
(10)建設。ただし、次の場合を除く。
  (ア)建設にあたって道具、機械、技術、専門性を要するインフラまたは運輸に関する国民向け基礎サービスの建設で、外国人の最低資本金が5億バーツ以上
  (イ)省令に定めるその他の建設
(11)仲介または代理。ただし、次の場合を除く。
  (ア)証券取引、農産物・金融債券・証券の先物取引に関する仲介または代理
  (イ)同一グループ内において製造もしくはサービス提供に必要となる商品もしくはサービスの取引もしくは調達に関する仲介または代理
  (ウ)国内で製造、もしくは海外から輸入された商品の販売を目的とした国内外における売買、調達、販売、マーケティングに関する仲介または代理で、外国人の最低資本金が1億バーツ以上
  (エ)省令に定めるその他の仲介または代理
(12)競売。ただし、次の場合を除く。
  (ア)タイの文化、工芸、古美術に関する、またはタイの歴史的価値を有する古物品、古美術品、芸術品の入札ではない、国際入札形式の競売
  (イ)省令に定めるその他の競売
(13)法律が禁止していない国内原産の農産物または農産品に関する国内取引(タイ国農産物先物取引市場における農産物先物取引を除く)
(14)全店舗の最低資本金が1億バーツ未満または1店舗あたりの最低資本金が2000万バーツ未満の小売業
(15)1店舗あたりの最低資本金が1億バーツ未満の卸売業
(16)広告業
(17)ホテル業(ホテルマネジメントサービスを除く)
(18)観光業
(19)食品または飲料品の販売
(20)農産物の品種拡大または改良
(21)その他のサービス業(省令に定めるサービス業を除く)

タイ人の名義借り

 ここで問題となるのがタイ人が株式の過半数を保有することによるリスクです。経営の主導権をタイ側が握ることになりますので、日本側の考え通りにいかないこともあるでしょう。また、最初は良好だった関係も事業を進めていくうちにうまくいかなくなることも出てきます。

 このため、タイ側出資分についてタイ人の名義を借りて会社を設立するケースがありますが、これは外国人事業法違反となり、名義を貸したタイ人、名義を借りた外国人ともに「3年以下の懲役もしくは10万バーツ以上100万バーツ以下の罰金、またはその併科」となります(第36条)。さらに会社閉鎖の可能性もありますので注意が必要です。

第36条

 タイ国籍者または本法に定める外国人でない法人が本法付表に定める事業について外国人を援助、支援、または共同で行う場合において、当該外国人が事業許可を得ていない、または本法の定めを回避することを目的として自己の事業であると表示することで外国人と共同で事業を行う、もしくは持分会社、株式会社、もしくはその他の法人において外国人に代わって株式を保有するとき、3年以下の懲役もしくは10万バーツ以上100万バーツ以下の罰金、またはその併科とする。タイ国籍者または本法に定める外国人でない法人による当該行為に同意した外国人も同様とする。合わせて、裁判所は援助、支援、共同事業、株式保有、出資者であることの停止を命令する。裁判所の決定に従わない場合、違反している期間、1日につき1万バーツ以上5万バーツ以下の罰金とする。


【会社基本事項】
会社基本事項の詳細

【関連記事】

法定利率および遅延損害金の改定


商業登記手数料の一部改定(2021年1月1日)


2019年労働者保護法(第7版)公布


駐在員事務所代表者の労働許可証の取得免除範囲


タイ駐在員事務所設立


タイ会社設立の登記料改定


解雇補償金は個人所得税の非課税対象