タイ雇用契約と請負契約

 従業員を雇用する場合、一般的には勤務時間や待遇、労働条件等を定めた雇用契約(民商法第575〜586条)を締結しますが、雇用契約と似た契約として請負契約(同第587〜607条)があります。主な違いは以下の通りです。

ポイント 雇用契約 請負契約
契約当事者 使用者と労働者 委託者と受託者
契約の目的 労働の提供 業務・成果物の完成
報酬の計算基礎 労働時間 業務・成果物の完成
指揮監督 あり(労働者は使用者に従属) なし(受託者は委託者から独立)
労働者保護法の適用 あり なし
使用機器材等 使用者が用意 受託者が用意

 極端なことを言えば、請負契約の下では受託者は何時に来て何時に帰ろうが(あるいは、来なくても)、契約に定めた納期までに業務・成果物が完成さえすれば報酬をもらえますが、雇用契約の下では労働者は当然ながら出社時間と退社時間、1日の労働時間が決められています。

 なお、請負契約は契約の性質上、建築、内装工事、運送業務等の契約に使われることが多いようです。

 雇用契約と請負契約において問題となることが多いのは、実質的には雇用契約であるにもかかわらず請負契約とするケースです。請負契約では労働者保護法の適用がないため労働者として扱われませんので、社会保険への加入や残業代の支払い等の義務が発生しません。このため、契約上は請負契約としてこれらの法的義務が発生しないようにし、コストや事務上の手間等の負担を回避しているケースがあります。しかし、訴訟等になった場合は労働の実態で判断されますので、あとで莫大な費用がかかってしまうこともあり、注意が必要です。