住宅賃貸借契約に関する規則 2020年1月30日改訂

 2018年5月1日から適用された住宅賃貸借契約に関する規則が2020年1月30日から改訂されました(2019年10月31日の官報告示から90日後)。
 主な改正点は以下の通りです。

改正点
保証金の定義(改訂)借主の使用を目的に貸主が用意した財産に生じる損害、または滞納費用(家賃を除く)に対する保証金住宅賃借、損害に対する保証金
サービス提供に関する費用の定義(新設)借主の住宅利用の利便性または安全性を目的としたサービス提供から生じる費用(貸主の事業運営上の原価は対象外)電気容量・水道容量登録費、水圧向上のための作業費などを例示のみ
前払い家賃の定義(新設)借主が貸主に家賃の保証として支払う賃料、かつ契約終了時に借主に返金または最終月に家賃に充当するもの規定なし
家賃等の請求書送付支払い期日の3日前まで支払い期日の7日前まで
借主による契約解除(中途解約)契約期間の半分を経過後から可規定なし
貸主による契約解除・契約違反=30日前までに告知
・他の入居者の平穏な居住に直接影響を及ぼす行為があった場合=7日前までに告知
・公序良俗違反=事前告知義務なし
借主の契約違反に対して、貸主が借主に30日以内の改善要求を書面で通知し、改善がない場合にのみ契約解除が可
貸主責任の免除・制限重要部分、かつ正当な理由がない場合、貸主による契約違反または侵害行為に対する責任を免除または制限することは不可貸主による契約違反または侵害行為に対する責任を免除または制限することは不可
前払い家賃、保証金の徴収上限家賃と保証金の合計で3カ月が上限家賃と保証金各1カ月が上限
前払い家賃、保証金の没収借主に責任がない場合は不可不可
貸主による事前告知のない立入検査立入検査を実施しないと貸主または他の入居者に損害または影響を与えるような緊急の場合は可不可
借主の使用拒否、残置物の差押え・処分貸主による法律に基づく契約解除前は不可(解除後は可)不可

 住居賃貸借契約に関する規則の導入は消費者(借主)保護が目的ですが、今回の改訂では貸主の権利を保護・拡大する内容が中心となっています。細かな解釈は今後の運用を待つことになりますが、貸主にとっては有利になる一方、借主は契約締結時に注意が必要となります。なかでも借主による中途解約の制限は、帰任等により中途解約せざるを得なくなった場合に影響を受けますので、契約締結時に帰任の場合は適用除外としてもらう等の交渉が必要になるでしょう。

 一方、前払い家賃の定義を新設するとともに保証金の定義を改訂したのは、契約満了時や中途解約時にトラブルとなりがちな保証金の取り扱いを明確にしたものと評価されます。つまり、保証金は従来、損害に対する保証金であると同時に賃借(つまりは家賃)に対する保証金でもあるとされていましたが、今回の改訂により保証金は損害に対する保証金および家賃を除く滞納費用(水道光熱費、サービス提供に関する費用)に対する保証金と定義付けられました。保証金は未払い家賃の担保ではなく、借主の責めに帰すべき損害が生じたときの担保という性質が明確になったと言えるでしょう。

 しかし、前払い家賃と保証金の合計の上限が3カ月分となったことにより、一般的に前払い家賃は1カ月分のため保証金を2カ月分とすることが可能になったという点は損害に対する担保という性質としては妥当かもしれませんが、金額が大きくなった分、保証金返還の場面でトラブルが増える可能性も否定できません。

 なお、旧規則に基づいて今回の規則施行前に締結された賃貸借契約は契約終了まで有効となります。