タイ夫婦別姓の法的背景

 タイでは、仏暦2505年姓名法第12条により夫婦は夫または妻のいずれかの姓を称するか、それぞれが従来の姓を引き続き称することができます(夫婦別姓)。

 以前は妻は必ず夫の姓に変えなければなりませんでしたが、憲法裁判所は2003年、旧第12条が法の下の平等および男女平等を定めた憲法第30条に反するとの判決を下したため(21/2546)、2005年に現在の条文に改正されました。

 なお、この憲法は当時の仏暦2540年(1997年)憲法のことで、第30条の規定は現憲法である仏暦2560年(2017年)憲法の第27条に引き継がれています。

姓名法

第12条
 夫婦は合意によりいずれかの姓を称し、またはそれぞれが従来の姓を称することができる。

旧第12条
 妻は夫の姓を称する。

 ちなみに、1913年にタイで初めて姓の使用を定めた法律が制定されたとき、妻は夫の姓を称するか、従来の姓を称するかを選択できましたが、1941年に制定された仏暦2484年姓名法では「妻は夫の姓を称する」に改正され、それが1962年制定の現姓名法に引き継がれたという経緯があります。

 一方、離婚または裁判所による取り消し判決により婚姻が終了した場合、もう一方の配偶者の姓を名乗っている者は旧姓に戻さなければなりませんが、配偶者死亡による婚姻終了の場合はそのまま使い続けることも可能です。ただし、その後再婚する場合は旧姓に戻す必要があります(第13条)。

 また、タイではミドルネームを称することができますが、配偶者の同意を得た場合は配偶者の姓をミドルネームに使用することも可能です(第6条第3項)。

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