酒類管理法改正、酒類販売者に対する規制強化と緩和

 仏暦2568年(2025年)酒類管理法(第2版)(2025年9月9日官報告示、同11月8日施行)では、酒類販売禁止時間内での飲酒禁止の明文化(「酒類販売禁止時間内の飲酒に罰則、酒類管理法改正」参照)に加えて、酒類販売者に対する規制強化措置と規制緩和につながる措置が改正されました。あわせて、行政職員の権限強化も行われました。以下、今回の主な改正点をご紹介します。

(注)参照法令中、太字部分が改定もしくは追加、または新設された条文となります。

酒類販売禁止対象者への販売規制強化

 仏暦2551年(2008年)酒類管理法では酒類販売禁止対象者(未成年者、酩酊者)を定めるのみでしたが、改正法では酒類販売禁止対象者に対する酒類販売者の対応措置についても明文化し、措置を講じなかったことにより第三者に危害が加わった場合の損害賠償の負担も明記されました。

仏暦2568年(2025年)酒類管理法(第2版)
第29条(改定)
 次の者に酒類を販売することを禁止する。
(1)満20歳未満の者
(2)酩酊者

 第1項の運用を目的として、酒類販売者は次の措置を講じなければならない。
(1)酒類の購入者または受取人の年齢に疑いのある場合、酒類販売者は当該の者に身分証明証または行政機関が発行する年齢が明記されたその他の証拠を提示させなければならない。
(2)酒類販売者は局長の定める規則および方法に従って必要かつ適切な範囲で酩酊状態を検査しなければならない。


 酒類販売者が故意または過失により第1項の禁止事項に違反したことを直接の原因として、第三者の生命、身体、健康、財産、権利に損害を与えたとき、当該の者は不法行為により損害賠償の責を負わなければならない。

行政職員の権限強化

 今回の法改正では、違反行為を行う製造者、輸入者、販売者に対する行政職員の権限強化も行われ、違反者に対する警告、違反行為の中止または是正命令、事業所等の閉鎖命令、酒類関連許可証の発行者に対する使用停止または取り消し命令の申し立て等の権限が与えられることになります。

第34条(改定)
 本法に定める職務遂行において、行政職員は次の権限を有する。
(1)本法遵守の検査を目的として、酒類の製造者・輸入者・販売者の事業所、酒類の製造・輸入・販売の場所、酒類保管所への当該場所の営業時間内における立ち入り、および車両の検査
(2)第28条(酒類販売禁止日・時間の指定)、第29条(酒類販売禁止対象者の指定)、第30条(酒類販売禁止の方法・形態の指定)、第32条(酒類販売禁止時間の飲酒禁止)の違反を疑う事由のある場合における検査または取り締まりを目的として、酒類を販売する場所もしくはエリア、または商業目的で酒類の消費用にサービスを提供する場所もしくはエリアへの立ち入り
(3)本法に対する違反行為のある場合、または違反行為と認められる適切な証拠のある場合、情報の記録を目的とする身分証明証または氏名・住所・写真のある他の書面の提示または閲覧
(4)訴訟提起に利するため、証拠またはその他の物品の検査または収集

(5)訴訟提起の証拠とするため、本法に違反する、または本法を遵守しない製造者、輸入者、販売者の酒類の押収または差し押さえ
(6)審査を目的として、供述を求める出頭状または書面または物品送付指示書の送付
(7)違反者に対する警告、違反行為の中止または是正の命令、広告媒体での拡散中止の命令
(8)違反行為に使用された場所、事業所、サービス提供場所の閉鎖、または、関連法に基づいて権限を有する政府職員もしくは政府担当官に申し立て、違反行為のあった場所、事業所、サービス提供場所の閉鎖、もしくは当該関連法に基づくその他の措置の実施
(9)物品税法に基づく許可証発行者に申し立て、酒類製造許可、酒類販売許可、酒類輸入販売許可の使用停止または取り消し命令


第36条(改定)
 第29条違反を除く本法に対する違反行為を発見したとき、行政職員は違反者に対して書面で警告、または当該違反行為の中止または是正、広告媒体での拡散中止を命令することができる。
 第1項に定める行政職員による警告または違反行為の中止または是正命令に対して、違反者が応じなかった場合、行政職員は本法に基づいて訴訟を提起する。


第36/1条(新設)
 第36条に定める措置に加えて、行政職員は次の措置を講じることができる。
(1)第27条(酒類販売禁止場所・エリアの指定)、第28条、第29条、第30条、第32/1条(酒類の広告禁止)に対する違反または不履行がある場合、行政職員は違反行為に使用された場所、事業所、サービス提供場所の閉鎖を命令する。期間は1回につき1年以下とする。または、関連法に基づいて権限を有する政府職員もしくは政府担当官に申し立て、違反行為のあった場所、事業所、サービス提供場所の閉鎖、もしくは当該関連法に基づくその他の措置の実施を検討させる。
(2)第26条(製造者、輸入者の義務)、第27条、第28条、第29条、第30条、第32/1条に対する違反または不履行がある場合、行政職員は物品税法に基づく許可証発行者に申し立て、酒類製造許可、酒類販売許可、酒類輸入販売許可の使用停止または取り消し命令を検討させる。
 第1項に定める閉鎖命令まはた関連法に基づく権限保持者への措置申し立ては、管理委員会が告示で定める規則、方法、条件に基づく。

自動販売機での酒類販売解禁?

 一方で酒類販売の規制緩和につながる規定も追加されました。飲料用自動販売機の設置がここ数年で急速に拡大しましたが、改正法施行後はその流れが酒類にも広がることになりそうです。

第30条(改定)
 次の方法または形態での酒類の販売を禁止する。
(1)自動販売機の使用 ただし、購入者の本人確認ができる自動販売機を除き、かつ管理委員会が告示で定める規則、方法、条件に基づく。

罰金額の引き上げ

 今回の法改正に伴い、酒類販売禁止対象者に対する販売および自動販売機での酒類販売に対する違反に対して、罰金額がこれまでの2万バーツ以下から10万バーツ以下に引き上げられました。

第40条(改定)
 第29条第1項に違反して酒類を販売した者は1年以下の懲役もしくは10万バーツ以下の罰金、またはその併科とする。ただし、当該の者が第29条第2項を実施した場合を除く。

第40/1条(新設)
 第30条(1)に違反して酒類を販売した者は1年以下の懲役もしくは10万バーツ以下の罰金、またはその併科とする。