人工妊娠中絶に関する刑法改正
人工妊娠中絶に関する刑法の条文(301条および305条)が改定されました。2021年2月6日官報告示、2021年2月7日施行。
主な改正点は以下の通り。
- 妊娠12週以内は人工妊娠中絶を可能とする
- 罰則を「6カ月以下の懲役もしくは1万バーツ以下の罰金、または懲役および罰金の併科」に改定(これまでは3年以下の懲役もしくは6万バーツ以下の罰金、または懲役および罰金を併科)
- 人工妊娠中絶を行った医師に対する罰則の例外規定として、胎児に重度の障害があると判断される場合、妊娠12週以内の場合、妊娠12週超20週以内で医師の助言に基づく場合を追加(これまでは妊婦の健康上の理由、性犯罪を原因とする妊娠のみ)
今回の改正は憲法裁判所による違憲判決(2020年2月19日付 4/2563)を受けたもので、人工妊娠中絶を禁止する刑法301条が憲法28条(何人も生命および身体に関する権利および自由を有する)に違反するというものです。旧301条は胎児の生命の保護がその趣旨でしたが、憲法裁はそれが妊婦の権利および自由を制限しているため、比例性の原則に基づいて胎児および妊婦双方の権利を保護する必要があるとして刑法および関連法の改正を求めていました。
改正後の条文は以下の通りです。
第301条
妊娠12週を超えて妊娠中絶した女または他の者に妊娠中絶させた女は6カ月以下の懲役もしくは1万バーツ以下の罰金に処し、または懲役および罰金を併科する。第305条
第301条および第302条に定める違法行為が以下の場合において医師の行為かつ医学会の原則に基づく場合、違法とはならない。(1)女の妊娠が身体または精神に危険となる場合
(2)胎児が出生した場合に重度の障害となる危険性が高い、または信じるに足る医療上の事由がある場合
(3)妊娠が性犯罪を原因とすると女が医師に対して主張した場合
(4)妊娠が12週以内の女が妊娠の中止を主張した場合
(5)年少者の妊娠問題の防止および解決に関する法律に基づく医学会および関係機関の助言によって厚生生大臣が告示した原則および方法により、医師またはその他の専門家が検査および選択的助言を行ったあと、妊娠が12週超20週以内の女が妊娠の中止を主張した場合