重国籍者の日本国籍選択期限の変更

 2018年成立の「民法の一部を改正する法律」により成年年齢が20歳から18歳に引き下げられることになりましたが、本年(2022年)4月1日に施行されます。これに伴って国籍法も改正され、重国籍者の国籍選択の期限が変更となります。

現行(2022年3月31日まで)

 国籍選択の期限は現行法では以下のように定められています。

国籍法第14条第1項
 外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなつた時が二十歳に達する以前であるときは二十二歳に達するまでに、その時が二十歳に達した後であるときはその時から二年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。

 つまり、

(1)20歳に達する以前に重国籍となった場合 → 22歳に達するまで

(2)20歳に達した後に重国籍となった場合 → 重国籍となった時から2年以内

に選択する必要があります。

改正後(2022年4月1日から)

 これが今回の改正により、

(1)18歳に達する以前に重国籍となった場合 → 20歳に達するまで

(2)18歳に達した後に重国籍となった場合 → 重国籍となった時から2年以内

となりますので、注意が必要です。

経過措置

 ただし、経過措置として

(1)2022年4月1日時点で20歳以上の重国籍者 → 22歳に達するまで(20歳に達した後に重国籍になった場合は重国籍になった時から2年以内)

(2)2022年4月1日時点で18歳以上20歳未満の重国籍者 → 同日から2年以内

にいずれかの国籍を選択することが可能です。

国籍選択の方法と届出先

 国籍選択の方法(日本とタイの重国籍者の場合)および届出先は、

日本国籍を選択する場合 → 「(日本)国籍選択届」を市町村役場または日本大使館領事部(海外在住の場合)

タイ国籍を選択する場合 → 「(日本)国籍離脱届」を住所地を管轄する法務局または日本大使館領事部(海外在住の場合)

となります。

 なお、仮に国籍選択届を提出しなかった場合、法務大臣による催告が行われ、催告を受けた日から1カ月以内に日本国籍を選択しないと日本国籍を喪失すると定められています(国籍法第15条第1項、第3項)。ただし、過去に催告が行われた事例はないようですので、事実上は重国籍が容認されていると言えるでしょう。

第15条第1項
 法務大臣は、外国の国籍を有する日本国民で前条第一項に定める期限内に日本の国籍の選択をしないものに対して、書面により、国籍の選択をすべきことを催告することができる。

同第3項
 前二項の規定による催告を受けた者は、催告を受けた日から一月以内に日本の国籍の選択をしなければ、その期間が経過した時に日本の国籍を失う。

外国籍の離脱

 一方、日本国籍を選択した場合、その後に外国籍の離脱手続きを行う必要があります。しかし、国籍法第16条第1項は

第16条第1項
 選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない。

と努力義務にとどまっているうえ、外国籍を離脱しなかった場合の罰則規定もありません。

タイ国籍離脱手続き

 タイ国籍の離脱手続きは満20歳に達した日から1年以内となります。

(タイ)国籍法第14条第1項
 出生時に父または母が外国人であり、かつ父または母の国籍法によりその国籍を取得したタイ国籍保有者、または第12条第2項(タイ国籍取得申請する外国人の未成年の子の同時申請)または第12/1条(2)(保護施設の未成年外国人)および(3)(未成年の外国人養子)によりタイ国籍を取得した者が引き続き他の国籍を保有することを希望する場合、満20歳に達した日から1年以内に省令に定める書式および方法によりタイ国籍離脱の意思を表明する。


届出先は

バンコクに本籍のある場合 → Special Branch Bureau(กองบัญชาการตำรวจสันติบาล

バンコク以外に本籍のある場合 → 当該県の県警察本部

海外に居住する場合 → 当該国にあるタイ大使館または領事館

のいずれかとなります。